近年、分子の自己組織化を利用した材料合成が大きく進展しているが、我々は様々な元素を用いた無機、あるいは無機―有機複合型のビルディングブロックの設計と自己組織化を一つのキーコンセプトとし、生体系に見られるような精緻な階層構造制御とそれに基づく新しい機能の創出を目指している。
ケージ状のシロキサン化合物は剛直で安定な骨格を有し、かつ頂点Siの化学修飾も容易であることから、ナノフィラーとして有用であるばかりでなく、ゼオライトのような結晶性無機多孔体の二次構造単位としても注目されている。これまでに、様々な有機リンカーを用いてケージシロキサンを連結することによって、無機・有機ユニットが交互に3次元的に配列した多孔性ネットワークを構築することに成功している。現在、このようなユニットからなる高次構造体を自在に構築するための合成技術の確立と異種金属の導入による触媒活性の付与、さらに自己組織化プロセスによる集積化について検討を行っている。
一方、有機化合物の多様な性質を利用した材料設計についても検討を行っている。光応答性分子で修飾された無機モノマーやオリゴマーを規則的に配列し、さらにマクロ形態をファイバー状やフィルム状に制御することによって、光照射によって形や構造を変化させる光応答性材料の合成に取り組んでいる。さらに、生体系における高度な修復メカニズムに倣い、ペプチドなどの可逆的な水素結合形成を利用し、外部応力を緩和しダメージを回復可能な自己修復性材料の創製を進めている。