小柳津 研一 教授

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研究キーワード

機能性高分子、電気物性、光物性、高分子合成、有機エレクトロニクス

研究内容

高密度レドックス分子を用いた有機電池やキャパシタなど,電子移動に基づく有機エレクトロニクス材料を開拓している。レドックス勾配を駆動力とする輸送現象に基づいて、湿式での電荷分離、輸送および貯蔵特性に優れる斬新な機能性ポリマーを創出し、有機電池、キャパシタ、太陽電池、発光、表示デバイスなどへの応用を試みている。これらは非晶質固体でも電場駆動による電荷輸送特性を示し、メモリ、ダイオード、スイッチング材料として新たな可能性が明らかになりつつある。

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(図1) (a) Typical redox polymer for charge transport and storage. (b) Charge propagation process.

レドックスポリマーの電気化学応答は、個々の応答の単純な足し合わせではなく、レドックス席間の自己電子交換によるホッピング伝導と、電荷補償イオンの物質拡散過程に支配される。スピンコートにより電極上に形成させたTEMPO置換ポリノルボルネン(図1)薄膜のサイクリックボルタモグラムは、酸化波と還元波が上下対称となる波形 (i = n²F²vAΓ*ζ/(RT(1+ζ)²) ただし ζ = exp[(nF/RT)(E – E°)]、E°は表面標準電位、Γ*はTEMPOの全表面濃度) に合致する。これは、電極上にある全てのTEMPO部位が電極電位と平衡状態にあることを示しており、ある電位で素早く電子を出し入れできることを立証している。酸化、還元状態が共に安定で、電荷が濃度勾配を駆動力としてポリマー内を効率よく伝播し、TEMPO部位がレドックス席として有効に働くためである。電荷伝播の素過程に当たる自己電子交換反応は、外圏機構によるため有機分子としては例外的に速く (kex = 105~107M-1s-1以上)、溶存TEMPOの大きな速度定数を反映している。

電気化学応答が半無限拡散から有限拡散へと移行する時間を、膜厚·と相関させることによって描かれる電荷伝播の仮想界面は、湿式デバイスを構成する電荷輸送材を特徴づける因子として有用であることを明らかにしている。

PROXYL置換ポリエーテル(図2)は、低いガラス転移温度かつ膨潤性高い主鎖でコンパクトな構造を有し、高容量正極活物質として有用なラジカルポリマーの例である。3-カルバモイル置換PROXYLから出発して、アルデヒド体を経由したエポキシ化の後、ZnEt2/H2O触媒を用いた配位アニオン重合によって高分子量体が得られている。自己電子交換の速度定数は108 M-1s-1に達し、高密度なレドックス席が電荷を高速輸送することを明らかにしている。

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(図2) PROXYL-functionalized polyether for high density charge storage.

知識としての化学だけでは終わらない。
使える化学を学んで、鍛え上げられた人材に。