高校1年生の時は創薬に興味があり、創薬方面への進学も考えていました。創薬系の学部か薬学部か迷っているうちに、薬にこだわらずに総合的に化学を勉強したいと考えるようになりました。その時早稲田の応用化学科のホームページから「役立つ化学、役立てる化学」のスローガンを知り、興味を持ちました。基礎から応用まで学べるところに魅力を感じ、応用化学科に志望を変更しました。
第一志望だった研究室に配属されて、研究活動がどういうものなのかを経験し、自分の研究テーマについて、より理解を深めたいと感じたことと、学部時代に授業を通して培ってきた知識をより活かせる仕事につきたいと考えたため、修士課程への進学を決めました。
液晶を形成する物質について、研究しています。液晶というのは、液体と固体の間の物質です。具体的には、界面活性剤に酸化グラフェンという無機ナノシートを混ぜて、界面活性剤の分子が水中で集合する時に無機ナノシートの存在がどのような影響を与えるかを調べています。界面活性剤は洗剤などにも使われている身近なものですが、先端材料の形成のテンプレートにも使われています。界面活性剤の分子の集まり方を理解することで、テンプレートとして使う際にどういう使い方ができるか、どう作ったらいいかを考える助けになる研究で、基礎研究に近いところになります。
国際系の学校だったこともあり、高校時代は国内留学という感覚でした。生徒の多くが海外からの帰国生で、中には高校に入るまで日本に住んだことのない生徒もいました。登校も私服で、朝、教室に入ると英語で会話しているクラスメイトがいたり、ハロウィンなどは先生も仮装してみんなで好きな格好で授業を受けたりしていました。天使の羽をつけて飴をくばってくれる先生もいらっしゃって、感覚はほとんど海外でした。そうした環境もあって、最も興味のある科目は英語でしたが、英語を強みに理系分野で活躍したいという夢と、ものづくりに興味があったことから、英語を活かせる道に進みたいと漠然と考えていました。
英語を使って研究にたずさわりたいという夢が実現していることです。研究室にはフランス人の先生や、中国からの研究員・留学生の方も複数いらっしゃるので、検討会をはじめ研究室ではすべての発表・質疑応答が英語で行われ、先生・学生からの連絡事項も日英両方でアナウンスされます。特に私はフランス人の先生のチームに所属しているため、研究に関する相談から日常会話まで全て英語でコミュニケーションを取っています。卒論も修論も英文で書くことのできる環境で研究を進められることにやりがいを感じています。
筑波に国立研究開発法人物質・材料研究機構という研究所があり、自分の作ったサンプルを分析するために研究所の装置を使わせていただいたことです。設備のレベルが高いのはもちろん、様々な国からの研究員の方々が一堂に会し、国際的な環境であることがうかがえました。装置の操作や分析方法、ディスカッションも全て英語で行われた1日だったのでとても印象に残っています。カフェテリアで食事をしていても、周りからは英語だけでなく、全然わからない言語も聞こえてきて、国際的な環境で働くということを少し体験できたように感じました。
進路は、今のところ就職を考えています。絶対この分野とは決めていないのですが、分析が楽しいので、研究室で学んだことを活かし、材料系のメーカーで働きたいと考えています。博士号取得への憧れがあり、理系に進学を決めたときは博士課程まで進みたいと考えていました。事情があって博士課程には進学しませんが、将来機会があれば博士の学位に挑戦したいと考えています。
高校までの知識からのイメージと大学に入ってからわかることではズレが生じることもあるので、もし迷っているようでしたら、応用化学科のように幅広く学べるところに進学して、視野を広げてから決めるのも遅くはないかなと思います。自分が「薬学」にこだわらずに応用化学科を選んだのは、有機化学系の研究室に配属されれば創薬系の企業も志望できると考えたからです。興味があることを全て勉強してから分野を絞ってもいいんじゃないかなと思います。